
レビューサイトでは批判コメントがゼロの大絶賛
任天堂の家庭用ゲーム機「Nintendo Switch」の最新作『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』が5月12日にリリースされました。国内での評価が非常に高いだけでなく、海外でも熱狂的な支持を受けています。ゲーム作品の評価指標である「メタスコア」は、2021年5月21日時点で驚異的な高得点の96点を獲得しました。このスコアは、世界中のメディア103社のレビューをまとめたものであり、そのうち101件が肯定的な評価であり、否定的な評価はゼロ件です。つまり、本作は非常に高い評判を得ていると言えます。96点のスコアは、ゲーム業界でも非常に高い評価を受けているものです。特に、100以上のレビューが寄せられた超大型タイトルとしては、歴代3位の高得点となっています。上位には、前作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(97点)と『スーパーマリオ オデッセイ』(97点)が続いています。この作品の大成功の要因は、その高い自由度にあるようです。前作で話題となった想定外の柔軟性をさらに上回る選択肢がプレイヤーに与えられています。無謀なアイデアさえも移動手段や攻撃方法として機能し、世界中の多くのプレイヤーを魅了しています。「自由度の高い冒険」に海外メディアも注目
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、プレイヤーがハイラル王国の異変に立ち向かう勇者・リンクとなるゲームです。敵の集団を倒しながら上位の装備を入手し、異変の元凶となる巨悪を打ち砕くことが目標とされています。その過程で、戦闘を自分なりの発想で有利に進めたり、困難な地形を乗り越えたり、パズルや謎を解いたりすることが求められます。この爽快感と興奮が世界中のプレイヤーを魅了しています。たとえば、敵がひしめく敵陣に直接突入して剣を振るうだけでなく、英国のテレグラフ紙の記者は、剣で木を切り倒して丸太を作り、そこにロケットを取り付けて敵陣に撃ち込み、一気に敵を壊滅させたと語っています。敵を撃退する手段にはほぼ制約がなく、自由度の高さが際立っています。プレイヤー自身が考えつかなかったような奇抜な戦術が、思いがけない形で大成功することもあります。この爽快感こそが、本作の魅力の一つです。テレグラフ紙は、既成の解決策にとらわれない柔軟なプレイが可能であることに感嘆し、「そう、『ティアーズ オブ ザ キングダム』は創造力と驚きに満ちた非凡なタイトルなのです」と評価しています。他のゲームがプレイヤーに状況を「語る」中、『ティアーズ オブ ザ キングダム』は知恵と創意を試す場を提供し、まさに英雄的な体験をプレイヤーに与えていると述べています。
プロデューサーの青沼氏は「ズルは楽しいもの」と語る
通常、開発側が想定しない方法や手段は、ズルやチート(不正行為)と見なされることがあります。しかし、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』では、開発者は王道パターンだけを正とするのではなく、プレイヤーたちの創意工夫を積極的に受け入れています。それにも関わらず、ゲームのバランスが崩れずに堅牢さと深みを持っています。例えば、ヘドロをまとった敵を倒すシーンでは、水の力を持つ仲間と協力して泥を洗い落とすこともできますし、手持ちの剣に放水アイテムを組み合わせて振るだけでも効果が得られます。ほとんどの場面で「これでないと進めない」という制約はありません。また、ダンジョンに相当する「祠(ほこら)」の解き方も多様です。純粋な謎解きに取り組むプレイヤーから、巧妙な発想で壁を乗り越えて進む強者まで、様々なスタイルがソーシャルメディア上で活気づけられています。任天堂の『ゼルダの伝説』シリーズ総合プロデューサーである青沼英二氏は、米ゲーム・インフォーマー誌のインタビューで「ズルは楽しいものです!」と語っています。彼は開発の過程で意図的に異なるクリア方法の余地を残したことを明かしています。青沼氏は続けます。「近道を見つけることは楽しいです。困難を回避できるなら、誰だって簡単な方法を求めたくなるでしょう。私たちは本作でそうした要素を残すことを望んでいました。さまざまなアプローチを用意し、1つの謎に対して多くの答えがあり、そしてすべてが正解になり得る。このような開発スタイルに至れたことを、私は幸せに思います」34歳の英紙記者はゲームに熱中し、飛行機に乗り遅れそうになった
青沼氏のアプローチが海外のプレイヤーやゲーム批評家たちの心に響いていることがわかった。海外の新聞記者たちからは、非常に前向きなコメントが相次いでいる。米ワシントン・ポスト紙は、多様な解法が存在する柔軟な謎解きに興奮し、「クリエイティブな天才になった気分にさせてくれる」「完璧に仕上がっている」と絶賛している。ニューヨーク・タイムズ紙は、アイテムの組み合わせによって新たな効果と活用法が無限に生まれるシステムを高く評価し、「創意工夫が報われるシステムになっている」と感心している様子だ。ハイラル王国の至る所に頭を悩ませる要素が散りばめられており、大人でも没頭できるタイトルとなったようだ。英ガーディアン紙の34歳の記者は、空港での待ち時間にプレイしていたところ、想像以上に熱中してしまった。その熱中ぶりは、あわや飛行機の出発時刻に遅れるところだったという。米評論メディアのスクリーン・ラントは、「その野心的なシステムが記憶に残るこのゲームでは、どんなプレイヤーであっても他の誰とも同じ体験をすることはない。知り尽くされていない可能性が喜びと興奮を引き起こすのみだ」と述べている。さらに同記事では、「『ティアーズ オブ ザ キングダム』は記念すべき偉業であり、これから何年も語り継がれることになるだろう」とも述べられている。ハイラル王国の伝承と古代文明の謎を扱うこの作品自体が、ゲーム史における「伝説」となる可能性もあるのかもしれない。
画面越しに思わず足がすくむ映像
本作のもうひとつの魅力は、段違いに広がったフィールドだ。前作では主人公・リンクが広大なハイラルの大地を徒歩や馬で駆け巡りましたが、今作ではさらに空に浮かぶ島々や暗く深い地底世界が登場し、冒険の舞台は高さ方向へと広がります。フィールドを縦方向に広げる動機は、前作との差別化にありました。任天堂のディレクターである藤林秀麿氏は、米テックメディアのワイヤード誌の取材で、前作では水平方向の冒険が主体であったため、大胆な変化を加えたかったと述べています。物語の冒頭でリンクが目覚める「始まりの空島」では、高所から大地を見下ろし、空中に浮かぶ遺跡を探索します。小さなSwitchの画面越しでも、その光景に思わず足がすくむような迫力があります。プレイヤーはゲームの世界に没入しながら、驚きと興奮を体験します。広大なマップの広さには無限のような錯覚さえ覚えることがあり、ガーディアン紙の記者は胸を躍らせていました。「このゲームは永遠に続くような気がする。攻略したと思うたびに、新たな展開が待っているのです」と語っています。12年前にひらめいたアイデアを実現させた
空からシームレスに地上に降り立つというアイデアは、本作のディレクターである藤林秀麿氏が、2011年に発売された『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』の開発時に思いついたものです。しかし、当時の技術的な制約から実現できず、空と地上は別々の世界として扱われました。そしてついに本作がNintendo Switchで登場し、ロード画面を必要とせずに天空と地上を自由に行き来することが可能になりました。青沼氏は語ります。「宮本さん(任天堂代表取締役フェローの宮本茂氏)もおっしゃっていたと思うのですが、アイデアがあり、それを実現したいとき、上手くいかなくても諦めることはありません。ただただ適した機会を待つのです」「これは私たち開発者全員に言えることだと思いますが、そうしたアイデアは頭の中に残り続け、仕事をしながらそれを内に秘めていきます。それが積み重なり、訪れるべきチャンスが現れたとき、そのアイデアを実現することができるのです」開発者用の機能をユーザーに解放する大胆さ
新たな行動範囲を提供するために、天井を突き抜けて上方へ移動する能力「トーレルーフ」が登場しました。青沼氏は米ゲームサイト「ポリゴン」のインタビューで、この能力の開発経緯について語っています。この能力は元々、開発チームがデバッグ用に使用していた特殊な機能でした。チームは洞窟の探検を終えると、デバッグ機能を使って地上に戻っていたのです。そこで藤林氏がひらめきました。「これはもしかしたら、ゲームの一部として活用できるかもしれない」と考えたんです」、ちょうどその頃、青沼氏は洞窟の探検を終えた後、同じ道を戻る作業の単調さに課題を感じていました。青沼氏が「戻るのは面倒くさいなあ」と漏らしたことが、その機能を正式に実装するきっかけとなったといいます。これは、プレイヤーに複数の選択肢を与えるという開発方針とも一致していました。その後、ユーザーが行き詰まらないように、意図しない動作を防ぐために微調整を繰り返し、新たな「能力」として提供することに成功しました。細かな不満を見逃さず改善を重ねた本作は、多くのプレイヤーの心を掴んだようです。多くの時間を移動に費やす本作ですが、不満はほとんど聞かれず、むしろどう移動するかを考える喜びとして成立しています。米ゲームサイトのニンテンドー・ライフは、「正直に言って、(空・陸・地底の)3つのマップをいくら行き来しても飽きが来ない」と感想を述べています。プレイヤーたちの常識を打ち砕くから支持される
『ティアーズ オブ ザ キングダム』は、前作『ブレス オブ ザ ワイルド』の人気を彷彿とさせる好スタートを切りました。前作同様、非常に自由度の高いオープンワールドゲームとして、ユーザーの常識を打ち砕いたことで広範な支持を受けました。前作のリリース時は、ゼルダの人気とNintendo Switch本体の供給不足が相まって、本体を購入したユーザーのうちブレス オブ ザ ワイルドを購入した割合が100%を超えるという異例の状況となりました。フォーブス誌によると、同年3月にハードウェアとソフトウェアが同時にリリースされた際、約90万台の本体に対し、ブレス オブ ザ ワイルドは約92万本が販売されたと報じられています。前作がそのような人気を博した一方で、『ティアーズ オブ ザ キングダム』は壮大なスケールとプレイの自由度においてさらなる飛躍を遂げていると言われています。大手ゲームサイトのIGNは、新しいシステムとマップが「前作で魅了された探索体験をさらに豊かにする」と評価し、「ブレス オブ ザ ワイルドはすでに完成度の高い作品でしたが、『ティアーズ オブ ザ キングダム』はまるでその草案のように感じられる」と述べています。前作でハイラル王国の平和を取り戻したリンクは、今回再び厄災が訪れ、ゼルダ姫が失踪してしまいます。王国の四つの地域で異変が起き、不気味な噂も広まる中、リンクは調査に乗り出し、漆黒に包まれたハイラル城を取り戻すために戦います。前作のコンセプトである「ゼルダのアタリマエを見直す」を継承し、今作もプレイヤーの発想力の限界に挑戦する密度の濃い内容となっています。文字通り無限の可能性を秘めたマップを舞台にし、世界のプレイヤーが無意識に信じている「ゲームだからこうするべき」という常識を心地よく塗り替えているのです。